様々な分野の大規模科学技術計算を行うための超高速処理が可能なコンピュータを一般に「スーパーコンピュータ」と呼んでいます。

スーパーコンピュータによるシミュレーション(模擬実験)は、実験、理論と並ぶ研究開発の第3の手法として益々重要になっています。なぜなら、調べようとする対象が複雑あるいは巨大すぎて解析的な解が求められなかったり、実験観測にあまりにも多くの時間・費用がかかるので事実上実験できなかったり、実験条件が極限状況ないし危険(放射能・高温など)であるため、あるいは自然、地域、社会などを対象とするため実験不可能な場合などに、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションは非常に有効だからです。

スーパーコンピュータは、自動車や飛行機の設計・製作のための構造解析や流体解析、天気予報のための気象シミュレーションなど、私たちの暮らしに直接関係する様々な分野で使われており、今後の科学技術の発展に不可欠です。

スーパーコンピュータの開発には、高性能LSIや低電力化などの半導体技術、光通信技術、ネットワーク技術、品質管理技術など、エレクトロニクスに関する総合的かつ高度な技術力が必要です。我が国はこの分野で世界のトップレベルにありますが、技術力の維持・向上のために継続的な研究開発が必要です。

※私たちの身の回りで活躍しているスパコンの事例を分かりやすく紹介しているハロー!スパコンをご参照下さい。


◆世界最速レベルの10ペタフロップス級の演算性能を持つスーパーコンピュータです。
平均的なパソコンの数十万台分の演算能力に匹敵します。
2012年秋頃に共用を開始する予定です。
多くの研究者が利用することを想定し、利用者の利便性や耐故障性・運用性に特に配慮しています。
 
※詳しくはシステム開発の狙いをご参照下さい。
  
  
【システム構成と特徴】 >>>詳細スペック
45nm半導体プロセス技術によるスカラ型CPU(SPARC64TM VIIIfx、8コア、128ギガFLOPS)を採用。高性能化・大規模化のための機能として、CPUが扱う細かいデータ単位を複数個まとめて扱えるよう拡張するとともに、データ一貫性のためのチェック・訂正及び再実行の機能を随所に備え、アプリケーション実行の高性能化・信頼性向上に寄与。
計算ノード間ネットワークには、構成の柔軟性・拡張性が高く超大規模接続が可能な直接結合網※2を採用。6次元メッシュ/トーラス結合(ユーザービューは3次元トーラス※2)を採用することで、ユーザー利便性、耐故障性・運用性の向上に寄与。
水冷システムを導入することにより、効率良くシステムを冷却して消費電力を削減するとともに、故障率を低減。
数百ペタバイト超級まで拡張可能な高機能・超大規模ファイルシステムを用い、数十ペタバイトのユーザー領域を提供。
グローバル及びローカルファイルシステムから成る2階層ファイルシステムを採用。ファイル移動には事前予約型の自動ステージング機能を提供。
※1 スカラ型スーパーコンピュータは、データを細かい単位で順次処理する仕組みのCPUを複数個ネットワークで結合して構成されるタイプのシステムであり、現在、世界的に主流となっている。ナノデバイスの構造解析、遺伝子やタンパク質などのデータ検索・解析のように、複雑なデータアクセスを行う計算によく用いられている。

※2 ネットワークには直接結合網と間接結合網という2つの方式がある。直接結合網は2ノード間の結合を様々に拡張して全体を構成する方式で、間接結合網は複数ノードの間の接続に 切り替え装置(スイッチ)などを用いて全体を構成する方式。3次元トーラスネットワークは直接結合網の一種であり、3次元の直方体に配置したノードをそれぞれ6方向で結合し、各次元がそれぞれリング状に結合されるネットワーク構成をとる。
  
【システム・ソフトウェア構成】
ハードウェアの性能を使い切るにはアプリケーション・プログラムとハードウェアの間を繋ぐシステム・ソフトウェアの充実が不可欠です。本システムにおいては、
OS(Operating System)には高いポータビリティを提供できるLinux
ソフトウェア資産の継続性も念頭に置いたプログラミング言語群
並列化のためのデータ通信を高機能に行うMPI(Message Passing Interface)ライブラリ
システムに最適化された高性能・高機能な科学技術計算ライブラリ
など、アプリケーション・プログラムが高性能を発揮できるユーザー利用環境を提供します。
     
◆「次世代スーパーコンピュータ」を活用することで、画期的な研究成果がもたらされると期待されています。
 予測する生命科学・医療および創薬基盤

新しい薬をつくる
人間の体にまつわる現象を、分子、細胞、臓器、前進などのさまざまな階層で予測することで、副作用のない新しい医薬品の開発をめざす。
(図版提供:大阪大学・理研)
 新物質・エネルギー創成

新しい電子デバイスやエネルギーを創る
新しい物質や新しい現象を探し、高機能・高性能な次世代電子デバイスの開発や、環境に優しいエネルギーの効率的な生成のしくみを導く。
(図版提供:東京大学)
 防災・減災に資する地球変動予測

台風の進路や集中豪雨を予測する
地球全体の規模で雲の動きなどを計算することにより、台風の進路や集中豪雨について精度の高い予測ができるようになり、災害の被害を大幅に減らすことができる。
(図版提供:JAMSTEC)
 次世代ものづくり

設計プロセスの革新
新しい技術を生み出したり、技術の組み合わせを最適化したり、製品を丸ごと性能評価することができるようになり、ものづくりの工程をよりよくできる。
(図版提供:東京大学他)
 物質と宇宙の起源と構造

物質の起源と宇宙の構造形成を探る
ビックバンから始まり、クォークなどの素粒子から元素が合成され、さらに星や銀河ができるまでのさまざまな過程を調べることで、物資の起源と宇宙の構造を解き明かす。
(図版提供:筑波大学他)

Copyright © Next-Generation Supercomputer R&D Center