【Q&A目次】
<「京」のシステムに関するご質問>
(ハードウェア関連)
Q10.
「京」のCPUはSPARCと呼ばれていますが、これは何のことですか。
Q11.
SPARCアーキテクチャは、サンが開発したので、これを使ったCPUは国産とは言えないのではないですか。
 
<「京」のシステムに関するご質問>
(ハードウェア関連)

Q10.「京」のCPUはSPARCと呼ばれていますが、これは何のことですか。

SPARC(Scalable Processor Architecture)は、命令セットアーキテクチャ(ISA)の名称です。SPARCは元々サン・マイクロシステムズ(現在、Oracle社)が1985年に開発したアーキテクチャですが、現在は、このSPARCから発展した命令セットアーキテクチャを総称してSPARCと呼んでいます。現在、SPARCのアーキテクチャの仕様はオープンなものとなっていて、非営利団体であるSPARCインターナショナルにより管理されています。SPARCインターナショナルからライセンス供与を受ければ、誰でもそれを使うことができます。

「京」のCPUは、命令セットアーキテクチャの1つであるSPARCアーキテクチャに対応するよう設計されているため、SPARCの名称を冠しています。

* 命令セットアーキテクチャ(ISA)
ある命令を出したらこのような計算等をするというCPUの動作、レジスタなどのCPU内部のメモリの形式や、取り扱う数値や文字データの形式などを規定したCPUの仕様。同一の命令セットアーキテクチャに合わせて設計されたCPUは、機械語命令レベルのプログラムを動かすにあたり互換性を持つ。現在、パーソナルコンピュータやサーバ等のスカラ型CPUの命令セットアーキテクチャは、SPARC(富士通、 Oracle)、POWER(IBM)、 x86(Intel、 AMD)、 IA64(Intel)等がある。


Q11. SPARCアーキテクチャは、サンが開発したので、これを使ったCPUは国産とは言えないのではないですか。

元々のSPARCアーキテクチャは、Q10で述べたようにサン・マイクロシステムズが開発したものですが、「京」では、オープンとなっているSPARCアーキテクチャをベースに、HPC-ACEと呼ぶ超高速処理が可能なアーキテクチャを新たに開発しました。これは、生命科学、ナノ材料、気候予測や構造解析などのアプリケーションを効率よく、超高速に実行できるとともに、従来は成しえなかった低消費電力を実現するもので、全て、我が国(富士通)が独自に開発したものです。

命令セットアーキテクチャのみならず、「京」のCPUは全て我が国において独自に設計・開発がなされました。具体的には、富士通が自社開発した45ナノの最新の半導体プロセスにより、その回路特性や許容できる電力条件、回路が占める面積などの物理条件を考慮しながら、HPC-ACEによる超高速計算を実現するCPU内のマルチコア構成、演算器、命令制御機構、高速のキャッシュメモリ構成や主記憶の制御機構などの設計を行いました。

最近のCPUの技術開発において重要なことは、高性能化と同時に低消費電力化と高信頼性を両立させる設計です。半導体の微細化により、過大な漏れ電流等の問題から動作周波数を上げて高速化を図ることは困難となり、高性能化と低消費電力化を図る設計が極めて重要な課題となっています。また、大量の部品を使用することから、CPUチップ自体も信頼性の高いものが求められます。「京」においては、このような課題を解決するための独自技術がふんだんに取り入れられているのです。

コンピュータのCPUには、あらゆる電子製品のコアとなる技術が集約されています。このCPU自身がサーバ等のコンピュータ製品に展開されていくだけでなく、今回の開発で培われた技術は、広く他の電子製品に応用されていくことが期待されます。

HPC-ACEの詳細な仕様は、SPARC64TMVIIIfx Extensionsをご参照ください。

また、「京」のために今回拡張した主な仕様は下記の通りです。

    浮動小数点レジスタの拡張:32本⇒256本
    ・SIMD(Single Instruction Multiple Data)演算機構の導入:2(Multi&Add) x 2並列
    ・セクタキャッシュ機構
    ・ハードウェアバリア機構、など