【Q&A目次】
<「京」に関するその他のご質問>
(その他)
Q12.
世界のスパコン開発において、「京」は他のスパコンより高いと聞きましたが、どう異なるのですか。
<「京」に関するその他のご質問>
(その他)

Q12.世界のスパコン開発において、「京」は他のスパコンより高いと聞きましたが、どう異なるのですか。

1.現在、「京」と同程度以上の計算能力を有するスーパーコンピュータとしては、米国において2012年から2013年の完成を目指して整備を進めている、 Sequoia(20ペタフロップス)、Titan(20ペタフロップス)Blue Waters(11.5ペタフロップス)(注)があります。 また、中国でもペタフロップス級のスーパーコンピュータとして星雲や天河1Aなどが整備されています。
 これらのコンピュータについて計算能力当たりのコストで比較※1すると、「京」よりもコストの低い機種もありますが、 スーパーコンピュータの性能はLINPACKベンチマークの計算能力のみで決まるのではなく、実際のアプリケーションでどの程度の実行性能が期待できるか、 また長時間にわたる計算が実行できる信頼性があるか、なども重要な指標です。 したがって、そうした指標も考慮して総合的に判断をすれば「京」は他のスーパーコンピュータと比較して決して高価なものではないと考えます。

(注)Blue Watersは2011年8月に調達先であるIBMが撤退し、改めてCLAY社が受注し、整備が再開されている。

※1 世界の開発プロジェクト予算の比較
  政府の予算状況が比較的明らかになっている国外のいくつかの開発プロジェクトと比較した表です。

・ドル円換算は、Blue Watersの設計を行ったPERCS計画がスタートした2003年から2010年までの平均レート
 $1=\106.67を使用
・人民元円換算は、1人民元=15円を使用
・Blue Watersは、IBMが整備していた時の数値を用いている。また、LINPACK実行効率を80%と仮定
(80%は汎用CPUを採用しているスパコンの平均的な実行効率の値)した。
(1) http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/5487.wss
(2) http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/20671.wss
(3) http://www.prace-ri.eu/IMG/pdf/chi.pdf



2.具体的には、「京」は、最先端のスカラ型CPUを採用し、LINPACK計算10ペタフロップス超の高い計算性能を持つのみならず、 以下の通り他のスーパーコンピュータと比較して優れた点を有しています。

◇CPU内の構成を工夫することにより、一回の命令で複数の演算を実行できるSIMD機構をもたせるとともに、高いメモリアクセス性能や大容量の倍精度浮動小数点レジスタを備えることにより、 より多くのデータを演算器とレジスタやメモリとの間で高速にやりとりすることができ、大量のデータが必要となる計算においてもCPUの高い能力を発揮できます。
 こうした機能により、例えば、ナノ材料の電子状態のシミュレーションを行うソフトでは1.5倍以上、地震・津波のシミュレーションソフトでは2倍以上の計算速度の向上が見込まれます。 (SIMD機能無し、メモリアクセス性能1/2、レジスタ数1/8の場合との比較)

(参考)米国で整備を進めている10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ (Sequoia, Blue Waters, Titan)と比較すると、1PF当たりのメモリアクセス性能は1.2倍から2倍程度高く、 1コア当たり倍精度浮動小数点レジスタ数は2倍から4倍程度大きくなっています。

◇計算ノード間を6次元メッシュ/トーラス構成による直接ネットワークで結ぶことにより、高い耐故障性やノード間の高速かつ低遅延でのデータ転送を実現している。
こうした機能により、例えば、ナノ材料の電子状態のシミュレーションを行うソフトでは1.5倍以上、地震・津波のシミュレーションソフトでは1.1倍程度の計算速度の向上が見込まれます。 (ネットワーク転送性能1/4の場合との比較)

(参考) 米国で整備を進めている10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ (Sequoia, Blue Waters, Titan)と比較すると、ノード当たりの転送性能は2倍程度高く、遅延時間は4割から7割と短く、 1PF当たりのネットワーク転送性能は4倍から20倍超大きい。

◇CPU内処理において致命的な影響を及ぼす間欠的なデータエラーなどに対し、エラー検出/訂正や命令再実行等のエラーリカバリ機能の充実、及び水冷方式による動作温度低減により、 信頼性を格段に向上させている。

これらの特長により、「京」は幅広いアプリケーションの実行において、高い実効性能を引き出すとともに、長時間にわたる計算においても確実に遂行する能力を有し、 ユーザーにとって利便性の高いスーパーコンピュータとなっています。



3.2011年11月のSC11(スーパーコンピュータ国際会議2011)において、「京」はHPCチャレンジ賞4部門すべてで第1位を獲得しました※2。これは、「京」がLINPACK計算だけでなく、 ハードウェアの総合的な性能でも世界最高であることを実証するものです。また同じくSC11にて、「京」によるシリコンナノワイヤの第一原理計算が、コンピュータシミュレーション分野で最高の賞である ゴードン・ベル賞の最高性能賞を受賞し、実際のアプリケーションにおいても、極めて高い性能を発揮することが示されました。こうした総合的な性能を活かして、今後、世界に先駆けて、多くの画期的な成果 が創出されるものと考えています。

ゴードン・ベル及びHPCCのプレスリリース

※2 HPCチャレンジベンチマーク:科学技術計算で多用される計算パターンから抽出した28項目の処理性能によって、スパコンの総合的な性能を評価するベンチマークプログラム。 この中でも、①Global HPL、②Global Random Access、③EPSTREAM、④Global FFTの4つについては、重要な指標として毎年秋に各部門の1位が表彰される。

【2011年HPCチャレンジ賞の結果】