スーパーコンピュータ「京」を知る集い in 札幌(開催報告)

 平成24年3月17日(土)に第8回目の「スーパーコンピュータ「京」を知る集い」を札幌コンベンションセンター(札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)において開催しました。
 今回、200名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。
 各講師のプレゼンテーション要旨につきましては、こちらからご覧いただけます。プレゼン資料ついては下記のプログラムの中にPDFファイルで置きましたので、ダウンロードしてご覧ください。
 なお、当日回収させていただきましたアンケート調査の結果はこちらをご覧下さい。次回以降の開催の際の参考とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

■概要

  • (1)主  催:独立行政法人理化学研究所
  • (2)開催日時:平成24年3月17日 土曜日 14時~16時(受付13時30分~)
  • (3)開催場所:札幌コンベンションセンター
            (札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)
  • (4)定員:300名程度(先着順)
  • (5)プログラム
14時~14時5分

主催者挨拶

平尾 公彦
理化学研究所計算科学研究機構 機構長
14時5分~14時35分

世界最速スーパーコンピュータ「京」プログラムpdf

渡邊 貞
理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 
プロジェクトリーダー
14時35分~15時15分

光る有機材料の開発と計算機シミュレーション プログラムpdf

善甫 康成
法政大学 情報科学部 教授
15時15分~16時00分

見えない海の今と将来を見せる海洋シミュレーション プログラムpdf

羽角 博康
東京大学 大気海洋研究所 准教授

■講演要旨

■世界最速スーパーコンピュータ「京」:渡邊 貞

スーパーコンピュータとは、加減算などの数値計算が一般的なコンピュータよりも桁違いに速いコンピュータであり、主に科学技術計算に使われるコンピュータのことを指します。そのスーパーコンピュータでは、超長時間の現象(宇宙、気候、環境)、超短時間の現象(核融合、衝突、燃焼)、実験不可能な現象(結晶、分子構造、気象)等を数値シミュレーションに置き換えることによって、目に見えないもの、予測できないもの、実験不可能なものを目で見、予測し、実験を行うことができます。
スーパーコンピュータの性能は、処理量を処理時間で割った値で表現できます。つまり、処理量が増えるほど、処理時間が減るほど性能が向上します。処理量を増やすには、演算器数やCPU数を増やす、あるいはメモリからの単位時間あたりのデータの供給量(メモリバンド幅)を増やす技術が用いられます。処理時間を短縮するにはCPUクロック時間を短縮する、トランジスタ間の距離を縮める(プロセスの微細化)技術が用いられます。「京」では45ナノの半導体プロセスが用いられています。これは2センチメートル四方のCPUチップを200メートル四方の東京ドームに例えると、球場の中に7~8ミリの間隔でトランジスタを全面に敷き詰めるほど大変な技術です。
これらの技術は日々進歩していますが、最先端の技術の集大成として、「京」は11月に目標性能である10PFLOPS以上を達成し,2期連続世界第一位となりました。また高負荷の下、29.5時間の連続走行、93.2%の高い実行効率も同時に達成しました.その他の「京」の特徴としまして、低消費電力が挙げられます。CPUのワット当りの演算性能は2.2GFlopであり、こちらにおいても世界トップクラスです。
「京」は現在、神戸に設立された計算科学研究機構に、864台の筐体の搬入が完了し、その一部をアプリケーション開発者や研究者に試験的に利用して頂き、ハードウェアやシステム・ソフトウェアの確認と評価をしている最中です。来年の6月にシステムの完成を予定しており、11月の本格運用の開始に向けて引き続き努力していく所存です。

■光る有機材料の開発と計算機シミュレーション:善甫 康成

現在、販売されているテレビなどの薄型ディスプレイは、液晶が使われている。その厚みは数センチであるが、家電見本市でも紹介されている有機ELを使った大型ディスプレイは数ミリの超薄型で、韓国の企業から今年中に発売されることが報道されている。スマートフォンなど小型のディスプレイには有機ELが既に一部で用いられ、低消費電力、高いコントラスト、低い環境負荷、と新聞などで大きな話題になっている。それが可能になったのは材料開発が急速に進んでいるからである。また有機材料はフレキシブルディスプレイや面発光照明、太陽電池など生活様式を大きく変えるインパクトを潜在的に持っている。
十数年前まで薄型テレビといえば、厚さは数センチであったが液晶を使った薄型ディスプレイを指し、日本の企業が開発し最も得意な分野であったはずである。しかし有機発光材料を使った製品開発では小型のものに限られ、日本の企業は少々劣勢である。これらの開発の鍵を握るのは、伝導性がありRGBそれぞれの色に「光る有機材料」である。構造的にも電子的にも多様性を持つものであるので、その開発には非常に長い時間を要する。この期間をできるだけ短縮することが日本の国際的な競争力を維持することにつながる。
処理能力が飛躍的に向上した最近のスーパーコンピュータを十分に活用できれば、日本の企業は優位な立場に立つことができるはずである。大規模なシミュレーション技術が、材料開発の飛躍的な進展に大きく貢献すると期待されているからである。講演では、大規模シミュレーション技術を用いての材料開発の例として、大型化が容易な高分子有機EL材料の開発について紹介を行う。

■見えない海の今と将来を見せる海洋シミュレーション:羽角 博康

人工衛星などによる観測システムの整備により、海洋の実態把握はひと昔前に比べて格段に進んでいます。しかし、氷海・深海や激しい変動現象など、現在の観測システムでは十分に捉えられないこともたくさんあり、海洋の全貌には未知の部分がまだまだ多く残されています。その未知なる海洋の姿を知るために、コンピュータの発展が可能にした高精度海洋シミュレーションが有力な手段として活用できるようになってきました。さらに、発見される海洋現象の科学的理解という意味においても、シミュレーションの重要性と有為性はますます高まっています。
一方、将来の海洋変化を予測する目的では、シミュレーションに頼る以外の方法はありません。特に地球温暖化に関連した将来気候予測においては、海洋を含む全地球規模の気候全体について数十年以上の長期にわたる予測が求められており、それに必要とされる計算量は膨大なものです。最先端の海洋シミュレーションでも海洋のあらゆる現象を適切に表現するには不足があるのですが、将来予測という目的では最先端シミュレーションを適用することも現状ではままなりません。海洋シミュレーションに不十分な点が残るということは、それを用いた将来予測に不正確さがあることを意味します。海洋現象の科学的理解を通して海洋シミュレーション手法の高度化を進めることはもとより、限られたコンピュータ資源を最大限に活用するための計算機科学的な開発にも多大な労力を費やしながら、我々はその不正確さを減らす努力を続けています。

■アンケート調査結果

※200名中191名が回答

Q1.ご職業を教えてください。

Q2.どちらからお越しになられましたか。

Q3.「京」を知る集いの開催をどこでお知りになりましたか。(複数回答)

Q4.講演内容について

Q5.開催時間について

Q6.京速コンピュータ「京」に関して、何に関心・興味がありますか。

■お問合せ先

独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 広報国際室 岡田 昭彦
TEL:078-940-5625 FAX:078-304-4964
E-mail:aics-koho@riken.jp

印刷用チラシデータはこちらからダウンロードしていただけます。【pdf 455KB】