京速コンピュータ「京」を知る集い in 福岡(開催報告)

 平成23年12月17日(土)に第5回目の「京速コンピュータ「京」を知る集い」を福岡 パピヨン24 ガスホール(福岡市博多区千代1-17-1)において開催しました。
 今回、124名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。
 各講師のプレゼンテーション要旨につきましては、こちらからご覧いただけます。プレゼン資料ついては下記のプログラムの中にPDFファイルで置きましたので、ダウンロードしてご覧ください。
 なお、当日回収させていただきましたアンケート調査の結果はこちらをご覧下さい。次回以降の開催の際の参考とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

■概要

  • (1)主  催:独立行政法人理化学研究所
  • (2)開催日時:平成23年12月17日 土曜日 14時~16時(受付13時30分~)
  • (3)開催場所:パピヨン24 2階 ガスホール
            (福岡市博多区千代1-17-1)
  • (4)定員:300名程度(先着順)
  • (5)プログラム
14時~14時5分

主催者挨拶

平尾 公彦
理化学研究所計算科学研究機構 機構長
14時5分~14時35分

世界最速スーパーコンピュータ「京」プログラムpdf

渡邊 貞
理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 プロジェクトリーダー
14時35分~15時15分

「京」で目指す自動車の次世代空力シミュレーションプログラムpdf

坪倉 誠
北海道大学大学院工学研究院 機械宇宙工学部門 准教授
15時15分~15時55分

スーパーコンピュータによる宇宙天気予報プログラムpdf

深沢 圭一郎
九州大学情報基盤研究開発センター 助教
15時55分~16時

閉会

■講演要旨

■世界最速スーパーコンピュータ「京」:渡辺 貞

 スーパーコンピュータとは、加減算などの数値計算が一般的なコンピュータよりも桁違いに速いコンピュータであり、主に科学技術計算に使われるコンピュータのことを指します。そのスーパーコンピュータでは、超長時間の現象(宇宙、気候、環境)、超短時間の現象(核融合、衝突、燃焼)、実験不可能な現象(結晶、分子構造、気象)等を数値シミュレーションに置き換えることによって、目に見えないもの、予測できないもの、実験不可能なものを目で見、予測し、実験を行うことができます。
 スーパーコンピュータの性能は、10年で数百倍から1,000倍の割合で進歩しています。1976年に開発されたスーパーコンピュータCray-1と現在の「京」を比較してみると、計算性能は6000万倍以上、メモリ容量は1億2000万倍以上となっています。性能を上げることは非常に重要で、例えば津波のシミュレーションでは、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ2」では2時間かかっていた計算が「京」では10分で実行できます。これは津波が発生してから計算を開始しても理論的には陸地への影響を予測できることを意味します。
 スーパーコンピュータの性能は、処理量を処理時間で割った値で表現できます。つまり、処理量が増えるほど、処理時間が減るほど性能が向上します。処理量を増やすには、演算器数やCPU数を増やす、あるいはメモリからの単位時間あたりのデータの供給量(メモリバンド幅)を増やす技術が用いられます。処理時間を短縮するにはCPUクロック時間を短縮する、トランジスタ間の距離を縮める(プロセスの微細化)技術が用いられます。「京」では45ナノの半導体プロセスが用いられています。これは2センチメートル四方のCPUチップを200メートル四方の東京ドームに例えると、球場の中に7~8ミリの間隔でトランジスタを全面に敷き詰めるほど大変な技術です。
 これらの技術は日々進歩していますが、最先端の技術の集大成として、「京」は今年の6月に8.16PFlopsという性能に続き、11月にはそれを上回る10.51PFlopsという性能を叩きだし、2期連続世界第一位となりました。これは第2位の中国の天河1A号の性能の4倍以上、第2位から8位までを足した性能を上回るという抜群の性能値です。また高負荷の下、29.5時間の連続走行、93.2%の高い実行効率も同時に達成し、これらも他国の現在のスーパーコンピュータでは未だ達成しえない値です。その他の「京」の特徴としまして、低消費電力が挙げられます。CPUのワット当りの演算性能は2.2GFlopであり、こちらにおいても世界トップクラスです。これを実現するために、通常のPCのCPUは約80~90度の温度で動作するところを、「京」では30度で動作させる冷却技術を採用しています。
 「京」は現在、神戸に設立された計算科学研究機構に、864台の筐体の搬入が完了し、その一部をアプリケーション開発者や研究者に試験的に利用して頂き、ハードウェアやシステム・ソフトウェアの確認と評価をしている最中です。来年の6月にシステムの完成を予定しており、11月の本格運用の開始に向けて引き続き努力していく所存です。

■「京」で目指す自動車の次世代空力シミュレーション:坪倉先生

 自動車空力設計にコンピュータシミュレーションが導入されて、20年近くが経とうとしています。この間、シミュレーションは製品開発をより速くより安く実現するツールとして大きく貢献し、かなりの成功をおさめてきました。しかしながら既存のシミュレーション技術はいわば風洞実験の代替ツールであり、新たな視点に基づく革新的なものづくりに十分貢献しているとはいえません。即ち、新興国の台頭やますます強まる環境負荷低減の要求の中、日本の自動車産業が今後も国際的な競争力を維持していくには、今までの自動車空力設計のプロセスそのものに革新が求められています。
 講演では、日本が国際的に優位に立つスーパーコンピューティング技術を利用してその実現を目指している、自動車用次世代空力・熱設計システムの開発状況について紹介しました。ここでは、自動車空力開発において大きな問題となっている、運動、熱、音との連成問題を主要課題とし、大規模数値シミュレーションを用いることで、今までの実験では難しかった非定常空力や熱、音の発生メカニズムの解明を目指しています。システムの開発は北海道大学の他、東京大学、豊橋技術科学大学、東京都市大学が連携で担当し、その実証は日本の主要自動車メーカーが参入するコンソーシアムが担当し、強力な産学連携体制で取り組んでいます。

■スーパーコンピュータによる宇宙天気予報:九州大学 情報基盤研究開発センター 深沢圭一郎

 地上の気象現象にならい、宇宙空間で起こる様々な現象を宇宙天気と呼んでいます。宇宙天気は太陽の活動が主な原因であり、太陽活動が激しくなると、宇宙天気は荒れ、磁気嵐と呼ばれる現象などが起きます。これらは宇宙空間で起こる現象ですので、通信・放送衛星や国際宇宙ステーションなどへの影響はもちろん、電磁気現象でもあるため、地上にも様々な影響を与えています。
 この宇宙天気を予報するために計算機シミュレーションが行われています。基本的に宇宙天気現象は電磁場とプラズマの相互作用から起きており、その現象を正確に扱えるシミュレーション手法(ブラソフシミュレーション)は計算機能力が足りないために未だ行われていません。そこで、近似を含んだシミュレーション手法(MHDシミュレーション)が活発に行われています。MHDシミュレーションは近似された手法ではありますが、宇宙天気現象をうまく再現でき、地球周辺の宇宙天気予報に実際に活用されています。
 また地球だけで無く、木星や土星の宇宙天気シミュレーションも行われています。これらの惑星では地球周辺では見られない様々な現象が起きていますが、宇宙天気シミュレーションによりその再現が段々と可能になってきています。
 これらのシミュレーションは宇宙という広大な領域を計算し、大小様々な規模の現象が起こるために膨大な計算機の能力が必要となっています。これから人類が宇宙を利活用する時代に向けて、安心安全な情報を得られるように、計算機を活用し、これからも研究開発を行っていきたいと思います。

■アンケート調査結果

※124名中122名が回答

Q1.ご職業を教えてください。

Q2.どちらからお越しになられましたか。

Q3.「京」を知る集いの開催をどこでお知りになりましたか。(複数回答)

Q4.講演内容について

Q5.開催時間について

Q6.京速コンピュータ「京」に関して、何に関心・興味がありますか。

■質疑応答

>こちらからご覧ください。

■お問合せ先

独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 広報国際室 岡田 昭彦
TEL:078-940-5625 FAX:078-304-4964
E-mail:aics-koho@riken.jp

印刷用チラシデータはこちらからダウンロードしていただけます。【pdf 418KB】