スーパーコンピュータ「京」を知る集い in 松山(開催報告)

 平成24年2月25日(土)に第7回目の「スーパーコンピュータ「京」を知る集い」を松山市立子規記念博物館(松山市道後公園1-30)において開催しました。
 今回、255名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。
 各講師のプレゼンテーション要旨につきましては、こちらからご覧いただけます。プレゼン資料ついては下記のプログラムの中にPDFファイルで置きましたので、ダウンロードしてご覧ください。
 なお、当日回収させていただきましたアンケート調査の結果はこちらをご覧下さい。次回以降の開催の際の参考とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

■概要

  • (1)主  催:独立行政法人理化学研究所
  • (2)開催日時:平成24年2月25日 土曜日 14時~16時(受付13時30分~)
  • (3)開催場所:松山市立子規記念博物館
            (松山市道後公園1-30)
  • (4)定員:200名程度(先着順)
  • (5)プログラム
14時~14時5分

主催者挨拶

平尾 公彦
理化学研究所計算科学研究機構 機構長
14時5分~14時35分

世界最速スーパーコンピュータ「京」プログラムpdf

渡邊 貞
理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
プロジェクトリーダー
14時35分~15時15分

計算機で観る蛋白質の形と動きプログラムpdf

杉田 有治
理化学研究所計算科学研究機構 粒子系生物物理研究チーム
チームリーダー
15時15分~16時00分

「京」が映し出す未来の気候プログラムpdf

富田 浩文
理化学研究所計算科学研究機構 複合系気候科学研究チーム
チームリーダー

■講演要旨

■世界最速スーパーコンピュータ「京」:渡邊 貞

スーパーコンピュータとは、加減算などの数値計算が一般的なコンピュータよりも桁違いに速いコンピュータであり、主に科学技術計算に使われるコンピュータのことを指します。そのスーパーコンピュータでは、超長時間の現象(宇宙、気候、環境)、超短時間の現象(核融合、衝突、燃焼)、実験不可能な現象(結晶、分子構造、気象)等を数値シミュレーションに置き換えることによって、目に見えないもの、予測できないもの、実験不可能なものを目で見、予測し、実験を行うことができます。
スーパーコンピュータの性能は、処理量を処理時間で割った値で表現できます。つまり、処理量が増えるほど、処理時間が減るほど性能が向上します。処理量を増やすには、演算器数やCPU数を増やす、あるいはメモリからの単位時間あたりのデータの供給量(メモリバンド幅)を増やす技術が用いられます。処理時間を短縮するにはCPUクロック時間を短縮する、トランジスタ間の距離を縮める(プロセスの微細化)技術が用いられます。「京」では45ナノの半導体プロセスが用いられています。これは2センチメートル四方のCPUチップを200メートル四方の東京ドームに例えると、球場の中に7~8ミリの間隔でトランジスタを全面に敷き詰めるほど大変な技術です。
これらの技術は日々進歩していますが、最先端の技術の集大成として、「京」は11月に目標性能である10PFLOPS以上を達成し,2期連続世界第一位となりました。また高負荷の下、29.5時間の連続走行、93.2%の高い実行効率も同時に達成しました.その他の「京」の特徴としまして、低消費電力が挙げられます。CPUのワット当りの演算性能は2.2GFlopであり、こちらにおいても世界トップクラスです。
「京」は現在、神戸に設立された計算科学研究機構に、864台の筐体の搬入が完了し、その一部をアプリケーション開発者や研究者に試験的に利用して頂き、ハードウェアやシステム・ソフトウェアの確認と評価をしている最中です。来年の6月にシステムの完成を予定しており、11月の本格運用の開始に向けて引き続き努力していく所存です。

■計算機で観る蛋白質の形と動き:杉田 有治

あらゆる生物は細胞から出来ています。そして、その細胞の70%は水が占めていて、残りの30%に蛋白質、核酸、脂質、糖質などの生体高分子が含まれます。このうち、最も多く含まれるのが蛋白質で全体の15%を占めています。 蛋白質は、約20種類のアミノ酸から構成されている鎖状の生体高分子ですが、生理的条件(すなわち、37度付近の温度、常圧、pH条件)を満たす場合には固有の立体構造を維持して、その機能を発現します。ここで、蛋白質の機能とは、生体内で生じる酵素反応を触媒したり、生体膜を超えたイオンや薬剤の輸送を行ったりするなど様々な生体現象をさします。この蛋白質の立体構造を観るためには、X線結晶構造解析が有効であることが約50年前に示され、その後多くの蛋白質の立体構造が解かれています。日本でも、兵庫県播磨にあるSPring8やつくばのPhoton Factoryなどの放射光施設を使うことで多くの立体構造が解明されてきました。蛋白質のX線結晶構造解析はとても強力な実験的手法で、その立体構造をA(1A = 10-10m:1mの百億分の一)の精度で解明することができます。しかし、その一方で溶液中、生体膜中、あるいは細胞の中での蛋白質の立体構造は大きく揺らいでいて、その分子運動(ダイナミクス)が機能と直結していることが明らかになってきました。蛋白質の分子運動と機能の関係を明らかにする研究は世界中の多くの研究者によって活発に行われていますが、X線結晶解析で実現したようなミクロの精度で分子ダイナミクスを解明できる手法は計算機を使った分子シミュレーションしかありません。「京」などの高速な計算機が利用できるようになるとこれまでよりも遥かに大きな蛋白質の計算や長時間の分子ダイナミクスの解析が実現すると期待されています。また、そのような計算が発展することにより、細胞内分子ダイナミクスの解析や蛋白質と薬剤の相互作用予測などが計算機上で可能になり、病気の原因の解明や新しい薬の設計に役立つと考えられています。

■「京」が映し出す未来の気候:富田 浩文

スーパーコンピュータ「京」がいよいよ本格稼働します。 このコンピュータを使った研究では、防災減災の観点からも大きな期待が寄せられています。 地震津波・気象気候に関する知見は、我々人類の未来にとっても喫緊の問題です。 人類にとってもっとも脅威をもたらす自然現象に一つが台風です。 スーパーコンピュータ「京」を駆使することにより、台風が、将来、どのように変質するか? 端的に言うと、強くなるのか弱くなるのか?多くなるのか少なくなるのか? などが、これまでよりもっと確からしさをもって言えるようになります。 本講演では、上記に焦点をあてながら、スーパーコンピュータを使った気候学研究の一端をわかりやすく説明いたします。

■アンケート調査結果

※255名中241名が回答

Q1.ご職業を教えてください。

Q2.どちらからお越しになられましたか。

Q3.「京」を知る集いの開催をどこでお知りになりましたか。(複数回答)

Q4.講演内容について

Q5.開催時間について

Q6.スーパーコンピュータ「京」に関して、何に関心・興味がありますか。

■お問合せ先

独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 広報国際室 岡田 昭彦
TEL:078-940-5625 FAX:078-304-4964
E-mail:aics-koho@riken.jp

印刷用チラシデータはこちらからダウンロードしていただけます。【pdf 393KB】